想像を絶する恐怖と苦悩と悲しみを乗り越えたこの若き女性の物語は、
読む人を深い共感と感動の渦に巻き込み、気づきと勇気を与えずにはいない実話である。
著者イマキュレー・イリバギザは、「永遠の春」と呼ばれた彼女の愛する国で、愛情あふれる家族に囲まれて育った。
しかし、1994年、ルワンダで起こった大量虐殺で、彼女の家族も惨殺されてしまう。
隣人や友人だったフツ族が襲いかかり、100日間で100万人のツチ族が虐殺されたのだ。
大鉈やナイフを持った殺戮者が「皆殺し」を叫び、生き残りを探す中、
牧師の家の狭いトイレに7人の女性と身を隠し、奇跡的に生き延びた著者。
どこからも助けは来ない。迫り来る恐怖と空腹に負けず、彼女は父の教え、祈りの力に気づき、
神様と対話しながら希望の光を灯し続けた。救助後にも襲ってくる試練を克服し、虐殺者をも許す境地に達する......。


今、「ホテル・ルワンダ」の公式HPを見ていて、こんな言葉があった。
「世界の人々はあの映像(大虐殺)を見て──“怖いね”と言うだけでディナーを続ける。」
そう、その通り。
そこで行動を起こす人は、ほんの一握り。

 
著者はある牧師のトイレにかくまってもらい、90日を生き抜いた数少ないツチ族。
3ヶ月の間、少しでも気を許せば襲い掛かってくる恐怖や絶望を払い、
いつも前向きに、今後のことを考えて生き抜いた。
特に尊敬するのは、薄い壁一枚向こうで殺人を犯しているフツ族の人々に対し、
彼女が殺人者たちを祈り、許そうとしていること。
長い長い祈りの日々の中、イマキュレーが授かった神からの言葉は、こんな感じだった。
 彼らは自分が犯した過ちを厳しく罰せられなければならない。
 しかし、人類は皆神の子である。
 殺人者たちでさえ、彼の家族、愛と緩しを受ける対象なのだ。
 彼らは悪魔にそそのかされているだけで、決して悪人ではない。

なぜそんなにも寛容になれるのか。

また、今後は英語力が必要となると思い、
狭いトイレの中で必死に勉強を始めたことに、すごく驚いた。
明日、牧師の家に殺人者が訪れ、トイレのドアが開けられるかもしれないというのに、
自分のやるべきことを見出し、将来を前向きに捉えている姿は、きっと真似ができない。

本書の大部分が祈りの話であり、
彼女の精神的安定は宗教によって得られたのだと分かるけれど、
どうしても、神に声をかけるという行動が、理解できなかった。
だけど「人の思いは必ず叶う」と信じずにはいられない。
人の思いが運命を呼び寄せるのだ。
訳者あとがきに、こんな文がありました。
 未来は、人の思いが創るのだとたくさんの人が言っています。
 思うことは叶うということも。

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